【連載/だからゲームはやめられない】第13回: ヘナチョコで可愛いマスコットとゲームの老舗が送る、鬼に金棒な傑作『どーもくんの不思議てれび』

どーもくんの不思議てれび
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どーもくんの不思議てれび

(by シェループ

「あのヘナチョコな生き物はなんだ……??」

1999年の6月頃だろうか。毎週土曜日、NHK総合で放送されている『土曜スタジオパーク』を見ていた時のことだった。スタジオ中央のテーブルの上に奇妙なキャラクターの人形が置かれているのを目にした。

モコモコとした茶色くて四角い体。
大きく空いた口と立派な歯。
そして、つぶらな瞳。

番組を見ていた私は、トークそっち抜けでキャラクターにくぎ付けになった。
あれは番組のマスコットか?それとも、ゲストが持ってきたぬいぐるみ?
だが、あんなキャラクターが登場するアニメも、幼児番組も見たことも聞いたこともない。
そもそも、なんの生き物だ…。

詳細を知ったのはそれより数日後、家電量販店で「NHK-BS1」と「NHK-BS2(現:NHK-BSプレミアム)」で放送予定の番組を紹介した冊子を目にした時。そこに件のキャラクターが表紙を飾っていて、名前は「どーもくん」とのことだった。
1998年12月22日に衛星放送開始10周年を記念して誕生したらしい。

後にNHKのスポットCMとして放送されていたパペットアニメも視聴。シュールな世界観、脇を固めるキャラクター達のかわいらしさに私は魅了され、気が付けばCMがあると思しき時間帯にはNHKへチャンネルを変えるように。さらにレンタルビデオ店で、CMのパペットアニメをまとめた『どーも338秒』なるソフトも発見し、レンタル。ついにはデパートで販売されていたぬいぐるみにも手を出し、自室に飾るに至った。

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今もなお、ぬいぐるみは自室にあり、独特の表情と共に存在感を放ち続けている。

そんなどーもくんのゲームが出ると知った時は、それはもうビックリした。

さらにビックリしたのが、発売元が任天堂であること。
マリオ、ゼルダの伝説などで世界的に知られる老舗中の老舗だ。
なにその組み合わせ!?
そもそも、どんな成りたちで任天堂がどーもくんに行き着いたんだ!?

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多くの謎を秘めながら、どーもくんのゲームこと『どーもくんの不思議てれび』は、2002年2月21日にゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売された。

ちなみに発売間もなく、任天堂の公式サイトに開発の背景などを紹介した記事が掲載された。それによると、パペットアニメを作っている会社と本作を作ったゲーム開発会社が同じグループ傘下にあったことから企画され、任天堂の元に持ち込まれて路線変更をへて、製品化に至ったらしい。

そして、肝心の中身も任天堂と組んで作られただけにある完成度。
傑作と断言できるゲームだった。

ストーリーは隕石によって破壊されたアンテナと故障したテレビを元に戻すべく、どーもくんがテレビの世界に入ってさまざまな番組に挑戦しながら、「アンテナのかけら」を探していくというもの。

番組とはゲームのことを指していて、「チャンネル」ごとにそれに準じた内容のものが用意されている。スポーツのチャンネルなら、野球、ゴルフを題材にした番組と言った具合だ。

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この番組の作りがすごく、単品のゲームとして成立する完成度。特に「ファミリー劇場」のチャンネルに用意された『魔女っち たーちゃん』は本格的な全方位型シューティングゲームで、ステージも5つ以上、それぞれに固有のボスとの戦闘が用意されているという、気合の入った内容になっている。

アクションゲームも当然のようにある。それも宝を探す探索型、悪党どもを蹴散らすベルトスクロール型、ゾンビを避けつつ行方不明の仲間を探し出す”ナンチャッテ”ホラーと、種類が多彩。そして、どれも立派な一つのゲームに完成されている。

他にも料理を作るゲーム、リズムに合わせて歌うリズムアクション、交響楽団を指揮してクラシック曲を演奏するゲーム、漁船漁業のゲームまであったりと至れり尽くせり。

もちろん、ストーリーもあり、どーもくん生みの親による監修も行われているので、キャラクター描写にも違和感がなく、オチも含めてきれいにまとまった内容になっている。

この見た目に反して難易度は高く、特に最序盤に遊べる鳥のヒナを成長させる番組、リズムアクションは根気が求められる難しさになっている。
ただ、番組をプレイする度に集まるコインを消費して、難易度を下げる「アイテム」を買うことができるなど、プレイすればするほど遊びやすくなる救済措置は整っている。

逆にアイテムを買うと効果を消せなくなったり、アイテムを使った、使わなかったのそれぞれで得点を記録できないなど、やり込むともどかしさを感じる部分もあるのだが、丁寧に作られた番組は圧巻の一言で、どーもくんのキャラクター描写も外していないなど、キャラクターを原作にしたゲームとしては合格点以上の出来。

まさかここまで面白いゲームとは。遊んだ時は本当に驚いた。任天堂が関わっているから大ハズレはまずないと思っていたが、それを上回ってくる辺り、さすが老舗。侮りがたい。

残念ながら、NHKのキャラクターを題材にしたゲームのため、宣伝は雑誌などに限定され、ひっそり発売された末に埋もれてしまった。だが、プレイした人からは隠れた傑作と絶賛される逸品である。

今では中古市場でしか手に入れることはできず、復刻も版権面から考えて絶望的だが、どこかで目にした暁にはぜひ、手に取ってみていただきたいゲームだ。任天堂とどーもくんのコラボレーション、とくとご覧あれ。

当時は衛星放送のキャラクターだったどーもくんも、今やNHKのキャラクターに大出世。
2018年12月22日には20歳の誕生日も迎えた。

これからも末永く愛され続けていって欲しいと思うばかりです。

でも、まさか数年後、アーノルド・シュワルツェネッガーの声(※)で「どーも」と発するようになるとは思いもしなかったよ。

※現在のどーもくんの声はシュワルツェネッガーのフィックス声優と知られる玄田哲章氏が担当。スポットCMおよび、ゲーム版は1998年当時から引き続き、元NHKアナウンサーの山川静夫氏の声となっています。

(c) 2002 Nintendo/SUZAK、(c) NHK・TYO
『どーもくんの不思議てれび』公式サイト

どーもくんの不思議てれび

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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