名探偵ピカチュウ

「ピカッとひらめいた!」

2016年、すい星のごとく現れたニンテンドー3DS用ダウンロードソフト『名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~』は衝撃的な作品だった。ポケットモンスターことポケモンで探偵アドベンチャーという内容もさることながら、シンボルキャラクターの「ピカチュウ」が、おなじみ大谷育江のかわいらしい鳴き声ではなく、大川透(※アニメ『鋼の錬金術師(初代)』のロイ・マスタング役などで知られる)の渋くてダンディな声で日本語を喋り、主人公で相棒の青年「ティム・グッドマン」と共に様々な事件に挑んでいくのだ。初めて紹介映像を見た時は、あまりの異様さに笑いが止まらず、釣られるように買ってしまった。

ただ、同作は物語が本番寸前で終わってしまうダイジェスト版だった。ゆえにすぐ、本編が来るものと思われた。しかし、一向に音沙汰なし。そんな最中、聞こえてきたのが、本作がハリウッドで実写映画化されるとの報せ。思わず耳を疑った。同時にゲーム版はそのフリか、とも。実際に以降も小出しで出演者のことが報じられ、現実味を帯びていった。

しかし、2018年にニンテンドー3DS用パッケージソフトで本編『名探偵ピカチュウ』が発売。よかった、ちゃんと作られてたと安堵した……のだが。同作、確かに「新コンビ誕生」の続きは描かれたが、綺麗な完結とはならなかった。妙な終わり方を迎えてしまったのだ。まさかの展開である。やはりゲーム版って、映画の前座なの?

そうこうしている内に、噂の映画版の予告が解禁。正真正銘の実写ポケモン映画になることが明かされた。リアルで不気味さすらある実写ポケモン達のことなど、どうでもいい。ゲーム版を遊んだ人間が気になるのはただ一つ。本作は綺麗に完結するのか?また、妙な終わり方をするのか?探偵映画になっているのか?それだけだった。

結論を言えば、(詳細は伏せるが)綺麗に完結した。
では、ちゃんと探偵映画になっていたのか。
そこは違った。事実上のパニック系アクション映画だった。

エピソードごとに多少異なるが、ゲーム版はティム、ピカチュウが現場の調査、関係者の人間とポケモンへの聞き込みをしつつ事件の真相を追い求め、締めに探偵モノの十八番「犯人はあなただ!」な追及へと至る流れとなっている。

映画版はそのような場面はほぼ無く、現地に赴いて調査したり、危機に瀕する展開がほとんど。ポケモンの襲撃から逃げのびる場面は特に尺が多めに取られているだけでなく、本格的な戦闘シーンまである。探偵どこ行った、である。

正直、ゲーム版を遊んだ人間としては、「なにか違う」という印象が終始、付きまとった。だが、悪い作品だったかと言われると断じて違う。実写のポケモン映画として、パニック系アクション映画として非常に良く出来ていた。そして、ゲーム版もう一つの魅力は見事に押さえられていた。人間社会でポケモンが暴れる怖さだ。

ゲームと同じく、映画版もポケモンを凶暴化させる薬「R」にまつわる物語が繰り広げられ、随所でその影響を受けたポケモンが人を襲ったり、暴れ回るシーンが多々描かれる。ゲームだとさほど気にしないことだが、ポケモン達が駆使する技というのは、どれも人に甚大な被害を及ぼすものばかりだ。ゲーム版はその怖さを描いた、とても稀少な作品でもあった。

映画版もそこをしっかり押さえている。それどころか、ハリウッドの技術もあって、緊張感・迫力共に抜群のシーンに仕上がっている。序盤、ティムとピカチュウがエイパムに襲われるシーンはまさにその象徴だ。リザードンとピカチュウの戦闘、ヒロイン・ルーシーのパートナーであるコダックの”とある技”もまた然り。いずれも、ゲーム版に負けず劣らずの怖さを描いている。

また、従来のポケモン世界と舞台となる「ライムシティ」の違いを、「モンスターボール」や「ポケモンリーグ」などの要素を用いて、順を追って紹介するオープニングも非常に印象深いものに仕上がっている。ライムシティ内の人間とポケモンが生活を営む光景も圧巻で、見た目とは裏腹にかわいらしく動くポケモン達も相まって圧倒させられる。

名探偵ピカチュウ

そして、ピカチュウ。初お披露目の際は不気味と評されたが、実際はそんなのが気にならなくなるほどかわいらしい仕草で、見る者の心をわしづかみにする。私は吹き替え版で鑑賞したのだが、ゲーム版とは異なる渋さと優しさが混ざり合った、俳優の西島秀俊による演技は独特の味わい深さが出ている。竹内涼真演じるティムとの掛け合いも楽しく、徐々に信頼関係が構築されていく流れはベタながらもグッとさせられるものがある。

他に吹き替えでは、ルーシーを『劇場版シティーハンター』での好演が印象に残る飯豊まりえが担当し、またも申し分ない声優ぶりを見せつける。
脇を固めるキャストにも、テレビアニメ版ポケモンで「ロケット団」のトリオを演じる林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコ、さらには同組織のボス「サカキ」演じる三宅健太を起用。ミュウツー役で劇場版ポケモンに欠かせない”あの人”、モブにゲーム版ヒロインのエミリアを演じられた清水理沙が出演しているのもナイスなファンサービスだ。

登場ポケモンは初代だけでなく、金銀、ルビーサファイア、XY、サンムーンなどの後続、最新作まで網羅している。ただ、一つのパニック系アクション映画として楽しめる作りなので、基本的にピカチュウだけ知っていれば十分。ゆくゆくは本作を機に気になったポケモンが登場する原点を辿るのも一興だ。ゲーム版『名探偵ピカチュウ』でもよし。

現代社会にポケモン達がいたら、どんな生活が営まれるのか。それを存分に味わえるので、興味があれば鑑賞いただきたい。ポケモンは全く知らないけど、パニック系アクション映画は大好きという人にもおすすめだ。

しかし、ああも綺麗に完結させて、ゲーム版はどうするんだ……?
続き出すの……?

仮に出すにしても、もう2年待たせるのは止めてよね……。

(C)2019 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C)2019 Pokemon.
映画『名探偵ピカチュウ』公式サイト

 

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