【映画レビュー】あの日の思い出に会いにいく『アベンジャーズ/エンドゲーム』

エンドゲーム
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(by 蛙田アメコ

※本レビューは内容についてのネタバレはありません※

号泣した。

11年前、2008年に『アイアンマン』から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)。強大な力を持つインフィニティ・ストーンをめぐる物語が『アベンジャーズ/エンドゲーム』で一旦の終幕を迎えた。『インフィニティ・サーガ』と銘打たれた作品群は次作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が最終作となるとアナウンスされているけれど、紛れもなくこの『アベンジャーズ/エンドゲーム』は23作にのぼる長大なシリーズの幕引きとして、このうえなく美しい物語だった。

映画館でずっと泣いていた。

素晴らしい脚本だった。素晴らしい配役だった。素晴らしい演出だった。ただ、それだけではない。『アベンジャーズ/エンドゲーム』という肉体を得た「私自身の11年間」が、映画館のスクリーンから私を殴りつけてきたのだ。

このエッセイでは、ネタバレを一切しない。ごく個人的な映画体験をもとに、『アベンジャーズ/エンドゲーム』を鑑賞するべき人は誰なのかを書いてみようと思う。結論から言えば、この映画は『あなたの思い出のなかに1本でもMCUの作品を観た人のための作品』だ。

■全作観てから行くべき映画なの?■
公開日から数日。SNS上では、こんな言説が散見される。

「予習しなくても楽しめる、とは言ってたけどなんだかんだ言って『アベンジャーズ/エンドゲーム』行くなら過去作ぜんぶ予習しておいたほうがいい! その方が楽しめる!!」

……まあ、一理あると思う。

・過去作品をくまなく網羅したセルフオマージュや小ネタの数々
・いままで積み重ねられてきたキャラクターたちによる胸躍るストーリー
・メインキャラクターたちの過去と現在の成長や変化の軌跡を味わえる構成

など、たしかに過去作の物語そのものが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の鑑賞を楽しいものにさせる。
だが。
しかし。
あえて言おう。「予習、として慌てて観る必要はそこまでない」と。

個人的には、フェイズ1作品(『アイアンマン』(2008年)~『アベンジャーズ』(2012年)』と、『アベンジャーズ』続編2本、それから食指の動いたここ3年の作品を見れば、『脚本や構成』として散りばめられた面白さは十分味わえると思う。なんなら丸腰で観に行ったって、まあまあ楽しめる。だってよく出来てるもの。

ただ、作品の予習以上に大事なことがある。あなたの生きてきた思い出のなかにアイアンマンやキャプテン・アメリカやアベンジャーズたちの姿が少しでもあること。
それがこの作品を思い切り楽しむための鍵なのだ。

■思い出が殴ってくる■
『アベンジャーズ/エンドゲーム』。
11年間追いかけてきた作品群の集大成とあって、大きな期待とちょっぴりの不安と緊張をもってスクリーンの前に座った。

気が付けば。
タイムスリップしていた。

『アイアンマン』に心躍らせながらバーガーキングに駆け込んだ大学生の私に。
居間のテレビで母と夢中になって『キャプテンアメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』や『マイティ・ソー』を観ていた日曜日の昼下がりに。
大熱狂して『アベンジャーズ』を何十回も劇場で観た、何だってできるつもりだった新社会人の自分に。
そう、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』は旅先のロンドンで必死に英語を聴き取りながら、友人と手を握り合ってロキの活躍を喜んだ。

最新作の公開日に風を切って歩いた川崎、新作の公開が待ち遠しくて胸を躍らせていた日々、仕事に疲れて劇場公開を見逃してしまった作品を夜中に家で観るときの缶ビール。

あの日々が、あの時が、あの頃の自分が、スクリーンの向こうには立っていたのだ。
アベンジャーズのヒーローたちと、ヴィラン達と一緒に、確かに私はそこに立っていた。

11年。
それは、あっという間と言い切るには長い時間だった。

自分のように映画が好きで、MCUの最新作を楽しみに日々を過ごしていた人はいわずもがな。

たとえば、ふらりとレイトショーで話題の映画を観て楽しかった思い出だとか。
たとえば、かつての恋人(べつに今の恋人でもいい)とのデートで出かけた映画館だとか。
たとえば、金曜の夜に眺めていたテレビでやっていた映画が存外に面白かったこととか。

そんな、なんでもない人生の一幕にアベンジャーズがいたならば、どうか『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観に行ってほしい。これは、あなたのための映画だから。

■映画が、現実の日々にしみだしてきた!■
そんなあなたが『アベンジャーズ/エンドゲーム』の観賞をおえたとき、フィクションが現実に滲みでてきていたことに気づくだろう。

アメコミなんて子供のものだ。
アメコミの映画なんて流行らない。

日本よ、これが映画だ――。こんな挑発的なキャッチコピーを『アベンジャーズ』のころには打てるようになっていたMCUも第1作『アイアンマン』の公開前には、凡百の映画のうちのひとつだった。

それが、いまやこんなにも長く続くシリーズになっている。
俳優たちはマーベル作品に出演することが一種のステータスにすらなっている。
沢山の人の思い出の中に、MCUの作品を観た時間が刻まれている。

いやね、すごいんですよ。
物語が、映画が、現実を変えた瞬間を、私はずっと目撃し続けられたんだと。

号泣した。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観ながら、映画館で私は泣いていた。

それはマーベル・シネマティック・ユニバースという奇跡をはじめから見届けられたことの幸運に感謝だった。
大学生だったり社会人だったりしながらMCUの映画を観て心踊らせていた11年間を愛おしいかけがえのないものとして振り返っている涙だった。

あなたの思い出の中に、少しでもマーベルがあるのなら。
ぜひ『アベンジャーズ/エンドゲーム』を、劇場に目撃しにいってください。
そうして、あの日の思い出に会いに行ってください。

予習なんか、いらないから。

…………あっ、でもやっぱり『キャプテン・マーベル』(2018)だけは最高だから絶対観てほしいです!!!!(やっかいな映画オタクの側面)

(c) 2019 MARVEL
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』公式サイト

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この記事を書いた人

蛙田アメコのアバター 蛙田アメコ ライトノベル作家

小説書きです。蛙が好き。落語も好き。食べることや映画も好き。最新ラノベ『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記〜かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』3巻まで発売中。既刊作のコミカライズ海外版も多数あり。アプリ『千銃士:Rhodoknight』メインシナリオ担当。個人リンク:  小説家になろう/Twitter/pixivFANBOX