清水ミチコ

3年前、清水ミチコさんのコンサートがWOWOWで放送されているのを見た。
「これだ。私は清水ミチコになりたいんだ!」直感的にそう思った。

会社を辞め数ヶ月。労働でクタクタになった身体が少し元気になって、やっと無職の不安に苛まれるようになってきた頃だった。これからどうやって生きていこうかはっきりとした答えが見つからず、ぼーっと過ごしていた。

そこに「清水ミチコ」である。衝撃の出会いからもう3回もコンサートに行った。

清水さんの魅力をここに書きたいが、私がどんなに筆を尽くそうとコンサートを1度見てもらうことには及ばないと思う。コンサートでは定番から新作のモノマネ・作曲法など様々なレパートリーが披露される。

清水さんの長年の十八番はユーミンこと松任谷由実さん。時事に因んだ替え歌を作ったりオリジナルの曲を作ったり……魅せ方はアップデートされ続けているので飽きることがない。今年の新曲『高輪ゲートウェイ』(中央フリーウェイの替え歌)は名曲だった。

歌もさることながら、清水さんのユーミンの喋り方はそっくりすぎて驚く。自分が作る曲がどうしても名曲になってしまう話や、突然カルマの話をし出す清水さんのユーミンは「清水ミチコがユーミンは高飛車なスピリチュアル女と言っている」と受け取られかねないスリリングなモノマネだ。しかし、清水さんはそのスリルすら楽しんでいる。

清水さんが一番真面目に歌うのは矢野顕子さんの歌だ。矢野さんのモノマネをしている時は、毒が抜ける。清水さんは純粋に矢野さんの音楽を崇拝している。

歌以外の定番は瀬戸内寂聴さんのモノマネ。ありがたいお話の中で、ありがたいグッズ(お水や杖など)を売ろうとするという「清水ミチコが瀬戸内寂聴は金に汚いと言っている」と受け取られかねないスリリングな説法だ。もちろん、清水さんはそのスリルすら楽しんでいる。

因みに、モノマネモノマネと書いてきたが、清水さんがしているパフォーマンスは厳密にはモノマネではない。

以前、みうらじゅんさんのラジオ『サブカルジェッター』にゲストで出演していた清水さんがこう仰っていた。

「シンガーソングライターの歌は、その人になりきって歌うものだと思ってきた。逆になんでその人の側に立って歌わないんだ」と。

清水さんはアーティストの声色を真似するだけではなく、アーティストの心になって歌っているのだ。モノマネという言葉では表しきれない奥深さがある。清水さんはモノマネではなく『ボヘミアン・ラプソディ』(映画)を演っているのだ。だから、実際はそこまで似ていないアーティストも似ているように感じるのだろう。

さて、私が感じた「清水ミチコになりたいんだ!」とは一体どうなりたいということなのか。私は歌いたいワケでもピアノを弾きたいワケでもない。「清水ミチコ」とは一体どんな存在なのか、を考えなければこの答えにはたどり着けない。

まずWikipediaで「清水ミチコ」を調べる。彼女の肩書きは「日本のタレント、ナレーター、女優、ラジオパーソナリティー、歌手、エッセイスト」だそうだ。つまり、彼女のことをバシッと表現する肩書きはないということ。

ユーミンが清水さんに初めて会った時、ユーミンは「あ、愉快犯だ」と言ったという。さすが天才アーティスト。恐るべし。ウィキペデアがまとめきらなかった清水さんの存在を一言で言い得ている。これには清水さんも感心していた。確かにお金の為ではなく、自分の幸せのためにやっているから愉快犯という言葉がしっくりくる、と。

この話で私は、なぜ自分が「清水ミチコ」になりたいかが心にストンと落ちてきた。

肩書きに縛られず、自分の幸せの為にやりたいことをやって生きていきたいんだ。そして、それをやることで人を楽しませられたら理想だ。これが「清水ミチコになりたい!」ということの本質だった。

「清水ミチコ」という生き方のベンチマークを見つけてからの私の人生は、信じられないくらい楽しい。書きたいからと勝手に文章を書いて、人に披露している。たまに面白がってもらえることもあり、そんな時は死ぬほど幸せだ。

人間は、好きなことをやって生きていけるのだ。好きなことを好きなだけやっていいのだ。何かが猛烈に好きだっていうこと自体が才能なのだ。これが、清水さんが私に教えてくれたとっても大切なこと。

(c) WOWOW
清水ミチコ公式サイト

 

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