【連載/だからゲームはやめられない】第12回: PS Vitaに爪痕を残した意欲作『テラウェイ~はがれた世界の大冒険~』

テラウェイ
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(by シェループ

携帯ゲーム機『PlayStation Vita(PS Vita)』が生産終了となり、現役を退いた。

先代『PlayStation Portable(PSP)』の後継機として生を受けた本機だったが、正直なところ、宝の持ち腐れを体現した携帯ゲーム機だったように思う。要因は色々と考えられるが……長くなるので割愛する。

ただ、独占タイトルに決め手となる一作が出なかったことだけは言っておきたい。『マインクラフト』というヒット作はあれど、同作は他のハードでも発売されているゲーム。PS Vitaだけのゲームで、そのようなゲームを出せなかったのは特に大きかったのではと思う。

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しかし、独占タイトルに魅力的な作品が無かった訳ではない。私が遊んだ中でも、2013年12月5日に発売された『Tearaway(テラウェイ) ~はがれた世界の大冒険~』は、もっと注目されていいと思えるゲームだった。
個人的にはPS Vitaを象徴する一本だと、今なお思ってやまない。

本作を買った動機は単純だった。PS Vita独占の完全新作だから。また、ジャイロセンサー、背面タッチパッド、カメラなどの機能を活用した作品であることにも興味を惹かれた。もしかしたら、新しい遊びを体験させてくれるのではないか、と。

その期待は予想を上回る形で現れた。何故なら……

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背面タッチパッドを触ったらデカい指が飛び出た!
おお、敵を吹っ飛ばせる!一網打尽じゃないか!
大きなブロックも動かせるぞ!

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太陽に何か映ってる……って、お、俺だぁ!!?(※人形で伏せています。)

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え、目を作って?!
って、それでいいの!?

……と言った、斬新な操作感とイベントの数々が飛び出したからだ。それゆえにビックリ仰天、目が点、声も出る出る。始めた当初は、序盤だけやってみるお試し感覚だったのだが、あまりの面白さに最後までやり通すことにし、不思議いっぱいな紙の世界へと入り込んでいった。

最終的に年末に差し掛かる頃、完結。
感想はただ一言、なんて面白いゲームだろう、だった。
そして、PS Vitaのゲームを遊んだという大きな満足感も得られた。

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ジャンルとしてはアクションアドベンチャーで、メッセンジャー「イオタ」と「アオイ」のいずれかを操作し、「おひサン(神様)」に手紙を届けるべく、紙で出来た世界を冒険していくという内容。作りはジャンルの王道に則っているが、プレイヤーが「大きなチカラ」なる操作で直接干渉できるのが最大の特徴で、その際にPS Vitaの各種機能をフル活用する。

背面タッチパッドを触って大きな指を出現させて敵を倒す、「トン!」と叩いて太鼓のジャンプ台を動かす、表側のタッチスクリーンで足場を作るなどなど。これらが抜群に面白く、効果音の気持ちよさと反応の仰々しさもあって、自然に触って動かしたくなる。

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道行く先で出会う住民が欲する”モノ”を作る、クラフトイベントもプレイヤーの作り上げたものがそのまま、作中の登場キャラクター達へ反映されるので、見栄えを意識するあまり、自然に力が入る。作成して欲しいものも基本、指示されるので、何を作ればいいのか途方に暮れることがないのも良心的だ。

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さらにカメラやジャイロセンサーもフル活用。色を失ったキャラクターを撮影して元の姿に戻したり、画面を振ってイベントを進めるなどのユニークな展開が楽しめる。しかも、撮影ではキャラクターを元に戻すと「テンプレート」なるものも入手。その実態は実物の「ペーパークラフト」を作るデータで、本当にその通りのキャラクターが作れてしまうからビックリだ。

もちろん、アクションアドベンチャーとしても山あり谷ありの構成で飽きさせない。難易度も優しめで、小さな子供から大人まで楽しく気持ちよく最後まで遊び通せるだけでなく、確かな手応えも得られるバランスにまとまっている。

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キャラクターと世界観も可愛いの一言で、全体的にNHK Eテレの児童向け番組を彷彿とさせる温かみに溢れている。特に主人公とプレイヤーをサポートする「みどりジィ」なる木のお爺さんを演じる声優が、同局の様々な番組で活躍されている大友龍三郎氏というのもツボを押さえていて見事だ。私は声を聞く度、「お前たち!これで終わったと思うなよ~!!」が脳裏を過ぎるのだが。

太陽に自分の姿がカメラを通じて映し出されるので、スクリーンショット撮影時に注意が必要だったり、クラフトイベントがやや過剰で、その度に本編進行の腰が折られる難点もある。しかし、それを帳消しにする面白さがあり、エンディング後の余韻にも唯一無二の味わいがある。

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後にも先にも、PS Vitaの独占タイトルの中で強烈な体験をした作品と言えば、私は本作を挙げる。そして、このゲームをプレイして、改めて私はPS Vitaというゲーム機の”おもちゃ”としての可能性を感じた。

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後年、本作はPS4でリメイク版も発売。私も購入し、最後まで遊んだが……やはりPS Vita版が最も面白く、刺激的だったという評価だ。ゲーム機の裏側を叩いたり、力を込めて触わるだけでも楽しいゲーム、これから先に出るか分からない。

確かにPS Vitaは先代ほどの活躍はできなかった。しかし、先代に真似できない遊びを本作で示し、爪痕を残した。それは間違いなく、このゲーム機を語る際に外せないものだと私は思ってやまない。

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高性能な先代PSP、PS4の周辺機器という印象のまま、PS Vitaを完結させようとしていないだろうか。もし、そうしようとしているなら、本作を遊んでいただきたい。そして、本作がいかなる爪痕を残したのかをご覧になって欲しい。
きっと、唯一無二の思い出が作られるはずだ。

消化不良な締め括りになったかもしれないけど、私はPS Vitaというゲーム機を忘れないし、これからも使い続けたく思う。

改めて、7年間お疲れさまでした。これからもよろしく。

++++
(c) 2015 Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Media Molecule.
『Tearaway(テラウェイ) ~はがれた世界の大冒険~』公式サイト



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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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