【映画レビュー】満を持して現代に蘇った『シティーハンター 新宿プライベート ・アイズ』

シティハンター
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(by シェループ

幼い頃、よく見ていたアニメは、と聞かれたら『ルパン三世』と『シティーハンター』の二作を挙げる。

何をきっかけにその二作を見るようになったのか。今となっては記憶にない。
ただ、いずれも車が発端だったように思う。特に『シティーハンター』の主人公、冴羽リョウが乗り回す「ミニクーパー」には子供心を大いにくすぐられ、父親に懇願し、実物見たさにあちこちの自動車販売店などを巡ったことがあった。

やがて関心は車から主人公へと移り、いずれも普段は女たらしなだらしのない姿を見せつつも、決めるべきところでは華麗に決めるカッコよさに魅了された。銃をあざやかに使いこなし、悪を成敗していく姿にも心を奪われ、玩具のピストル、モデルガンを親にねだって買い集めもし、この時、私は銃で戦うヒーローというものに強い憧れを抱くようになった。

そんな二作は本放送ではなく、夕方五時の再放送で見ていた。現代の基準で考えれば、信じられない話だ。どちらも暴力、性的な表現の目立つ内容だったからである。よくそんな作品に幼い頃、夢中になっていたなと、後年に思ったりもした。
だが実際、カッコよかったのだ。中でも『シティーハンター』のリョウは別格だった。

本放送、再放送が終わった後も『ルパン三世』はテレビ特番・映画という形で残り、前者は年に一度の恒例行事として定着。『シティーハンター』も1996年にテレビ特番が組まれ、翌年、一つ飛んで1999年と放送されて、ルパン同様に定着すると思われた。

しかし続く2000年、特番は放送されなかった。以降もそれは続き、気が付けば十年以上の時が経過。合間にパラレルワールドを描いた続編『エンジェル・ハート』が2005年から2006年にかけて深夜枠で、2015年には俳優の上川隆也主演の実写ドラマ版が放送されたが、『シティーハンター』は音沙汰無し。アニメの同作で育った人間としては、もうあの頃のリョウには会えない、新作は作れなくなったのかと、諦めに等しい寂しさを感じていた。

そんな中、飛び込んできた今回の劇場版。
第一報を聞いた時は少し泣きそうになった。
しかも出演声優陣、総監督はあの頃のまま。エンディングテーマもTM NETWORKの『Get Wild』。極めつけに当時、デビュー間もない新人声優だった山寺宏一、大塚芳忠といった「功労者」の方々のゲスト起用。
なんだこの、直撃世代にワンホールショットを撃つかのごときファンサービスの数々は。こんなの、観に行くしかないじゃないかと、流れるように劇場へと足を運んだ。

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そこには紛れもない、あの頃の『シティーハンター』があった。

時代設定が現代になったことで、スマートフォン、ドローン、AIなどの最新機器・技術が登場するようになり、リョウもそれらを使う身になった。
しかし、当の本人はいつも通り。今回も依頼人の女性に手を出そうとするわ、件の最新機器を悪用して”もっこり”するわのやりたい放題。そして、それを劇場公開記念仕様の100tハンマー、”こんぺいとう”などで制裁する相棒(槙村香)。
間違いなくシティーハンターだ。それだけでも感無量の一言に尽きた。

ストーリーも驚くほど”あの頃のまま”。大体、予想通りの人物が黒幕で、終盤にリョウと仲間達が奮闘の末に成敗する。相手が現代の最新兵器で襲いながら、当のリョウは愛銃「コルト・パイソン」で挑む荒唐無稽な展開も山盛りで、「そんなバカな」と思いつつも、リョウなら大丈夫という謎の安心感が維持されながら最後まで走り抜ける。

音楽もテレビアニメ時代の名曲が”原曲まま”、それも効果的なタイミングで流れ、当時の世代の心を鷲掴みにする。
声優陣の演技もあの頃のままで、御年72歳ながら、全く衰えを感じさせない声量でリョウを演じる神谷明氏は、まさに”レジェンド”と言われるだけのすごさ。ゲスト陣も素晴らしく、ヒロイン役の飯豊まりえ、ファッションデザイナー役の徳井義実(チュートリアル)は見事に”声優”をしている。前者は声優初挑戦(※特撮でアテレコ経験はある模様)とのことだが、とても素晴らしい演技をされていて、今後、そちらの道を究めてみては、と思ってしまった。もちろん山寺氏、大塚氏も盤石。いずれもモブキャラクターを担当していた頃からの出世を感じさせる迫力があった。

裏を返せば、”あの頃のまま”は80~90年代のままを意味するので、テレビアニメ時代を知らない世代には賛否が分かれる。「何故、こんな大変な事態に政府が動かない?」「あの大爆発で無事って……」とツッコミを入れたくなる場面は山ほどある上、敵側も勧善懲悪を貫いている関係で人物の掘り下げが甘い。ドラマに期待すると肩透かし必至だ。サプライズの『キャッツアイ』とのコラボも、活躍するのは終盤で、物足りなさと無理矢理感は否めない。

しかし、普段はだらしなく、戦闘では華麗に決めるリョウは色褪せないカッコよさがあり、特にラストで明かされる香への思いには、グッとさせられるものがある。エンディングも鉄板の『Get Wild』だ。当然、あの演出で”ビシッ”と決めてくれる。しかも、そこから先にはさらなるサプライズが”右上”に待っている。

まさにファンのために全力で応えた映画。それゆえにこそ、当時の世代は是が非でも、劇場に足を運んでみて欲しい。テレビアニメは見たことのない若い世代も、『Get Wild』のことだけ知っていれば十分。きっと言葉に言い表せないカッコよさを体感するはずだ。

満を持して、現代に蘇った『シティーハンター』。ここから20年前に果たせなかったルパン化に向けて動き出すのか、再び劇場版の新作が作られるのか。これからの展開を心待ちにしたい。改めておかえり、冴羽リョウと相棒の槇村香!!

それにしても……、

・いつも通り
・20年越しで風景などが現代基準に
・ドローンの登場
・おかえり!

……同じような特徴を持つゲームをつい先日、遊んだような…?

++++
(C)北条司/NSP、「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
『劇場版シティハンター プライベート・アイズ』公式サイト

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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