【連載/だからゲームはやめられない】第10回: 3D酔いの地獄を味わいつつ、沢山の恩恵を得た傑作中の傑作『ゴールデンアイ 007』

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(by シェループ

1994年末より始まった次世代ゲーム機の台頭。
セガサターンにするか、或いはPlayStationにするか。
次第に私も、次のゲーム機を選択しなければならなくなった。

複数の選択肢の中、私が選んだのは1996年に発売されたNINTENDO64(以下、ロクヨン)。理由はシンプルに古い付き合いであるマリオの新作が出ること、スーパーファミコンの次の主力ゲーム機になる根拠なき確信からである。

だが、この選択は本体発売から三ヶ月も新作が出ない悪循環、マリオに並ぶ古い付き合いのロックマンの新作がPlayStation、セガサターンで出るのが判明した時、大きな間違いであったことを知らされた。

翌年には『ファイナルファンタジーVII』発売で、主力ゲーム機はPlayStationに。当時は自分の意志で自由にゲーム機、ゲームソフトを買えず、親もこれ以上のゲーム機購入を許さなかったので、結果的に私は時代に取り残され、ロックマンを始めとする新作の話題の輪に入れず孤立するという、悪夢のような日々を送ることになった。

だが、スーパーファミコン時代、マリオやロックマンと共に当時のアクションゲーム界隈を支えた『ボンバーマン』、『がんばれゴエモン』はロクヨンにも新作を供給してくれ、心の支えになってくれた。

もう一つの支えが「レア社」。1994年の『スーパードンキーコング』で鮮烈な存在感を示した、イギリスに拠点を構えるゲーム開発会社だ。同社はロクヨンでも新作の制作に取り組み、1997年3月21日に建造物破壊アクション『ブラストドーザー』を発売。

続く二作目が同年8月23日に発売された『ゴールデンアイ 007』。その存在は1996年に店頭配布された、新作紹介パンフレットで存じていた。一人称視点で3D空間を進み、敵を静かに倒しながら任務を遂行していくその内容はとても興味深く、かつて夕方五時に放送され、私自身も夢中になって見ていた『ルパン三世』、『シティーハンター』のような、銃で戦うヒーローになりきれるゲームということで、遊んでみたい気持ちにさせられた。

何より一層興味を抱かせたのが父親の反応だった。
ある日、父親が新聞を読んでいる隣で、私は件のパンフレットを眺めていた。
すると、こちらにふと目を向けて間もなく、興味深そうにこう言った。

「007?ゲーム出るの?」

え、これ知っているの、と勢いで聞いた。
すると、こう答えた。

「俺が小学生の時からやってるスパイ映画だよ。何作目だったか忘れたけど、スキーしながら敵の追撃を逃げるシーンとかがあるんだ。車が変形したりもするんだぜ。」

更にこんな事も教えてくれた。

「作品ごとに主人公を演じる人も違うんだ。俺が観たのは一番最初と三代目だったかな。今は何人目だろ…?」

そんなに古くて有名な作品だったなんてと、興味深くその話に耳を傾けた。ただ、当時の私は実写映画に恐怖心を抱いていたため、そちらを観る気にはなれなかった。反面、ゲームへの興味は一層強くなり、当時、購読していたゲーム雑誌で、本作にも最大四人まで遊べる対戦モードがあり、べらぼうに面白いとの評を見て、購入を決断。
やや特殊な形で007の世界に足を踏み入れた。

だが、いきなり地獄を見た。
最初のステージを終えて間もなく、乗り物酔いに似た不快感と強烈な吐き気が!

俗に言う「3D酔い」を発症し、ゲーム続行不可になるほど体調を崩してしまった。

症状のことは先の雑誌で知っていたが、体験したのは本作が初めて。まさかここまで凶悪とは思いもせず、その時は危険なゲームに手を出してしまったと恐怖した。

でも、銃で戦うヒーローになれるゲームをこの程度で断念してたまるかとも思い、後日、酔うの覚悟で続行。気が付けば視点に慣れて酔いは発症しなくなり、マシンガンをぶっ放す快感に心を奪われ、至福の気持ちに浸る自分がそこに居たのだった。

最終的な評価も傑作に。特に強力な自動照準機能により、思う存分に銃で戦うヒーローの醍醐味を味わえるのが面白かった。大きな音を鳴らすと敵が大挙してやってくるなど、スパイらしく隠密行動が求められる難易度も手応え十分。銃撃戦でも周囲の地形を活かして立ち回るなど、緊張感に富んだ作りで驚かされた。難易度を変えると遂行する任務が増えたり、クリア後には特別な隠しステージが二つ遊べるなど、ボリュームも満点。

そして、対戦プレイ。これが雑誌の評に違わぬ圧倒的な面白さで、評判を聞きつけた同級生が本作目的で自宅にやってくるほどの大好評を博した。それを機に本作を買う人も現れ、新たな友人が出来ることまで起きた。

更に長く遊ばれるにつれ、独自ルールを作るなど、自分達なりの工夫を凝らした対戦を展開することも。結果的に購入から4年も現役の対戦ツールとして活躍し続ける寿命の長さを見せつけた。こんなに息の長いゲームになるとは誰が予想したか。

様々な悲劇に見舞われたため、ロクヨンを買ったことには後悔していた。
だが、別れあれば新たな出会いあり。本作はその事実と、ロクヨンを買った判断が間違ってなかったことを教えてくれるだけでなく、交友関係を広げる役割も果たしてくれた。

今まで、多くのゲームをプレイしてきたけど、「人生に影響を与えたゲームは?」と聞かれれば、間違いなく本作はその一つとして挙がる。さすがに何十年も経った今に遊ぶと、主に操作面で古臭さが否めないが、対戦の面白さは色褪せない。世界的にも大好評を博し、日本国内におけるFPSへの理解を深めた点でも、歴史に名を残す傑作と言っていいだろう。

単に面白かっただけで終わらない、沢山の思い出を残してくれた作品。
これからも手元から離さず、残し続けたいゲームだ。

そして、本作が傑作であったことは、一つの決意を固めさせるに至った。

「映画の007、観てみよう!」

第11回へつづく…

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(c) Rare Ltd., (c) Nintendo Co., Ltd., (C) 1995 Danjaq, LLC and United Artists Corporation.

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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