【連載/だからゲームはやめられない】第6回: 何十年もお世話になった玩具屋での最後のお買い物『ワイルドアームズ アルターコード:エフ』

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(by シェループ

かつて、地元に一つの玩具屋があった。

同級生の友人も通い詰めるほど、そこは名の知られた存在で、特にゲームソフトを買うと決まって値引きしてくれるなど、サービス精神の良さで評判だった。

私も小学生時代から、その玩具屋にはお世話になっていて、中学生以降は必ずそこでゲームソフトを買っていた。店を切り盛りするおばさんとも顔見知りになり、買うゲームのことで雑談を繰り広げたり、その相談に乗ってくれたり、時には知られざるゲームを教えてくれたりもして、凄くお世話になった。

だが、2006年11月下旬のこと。
ふと、店の近くを通りかかると、店内がお客さんでごった返していた。
一体、何事かと、思わず気になって中に入った。
すると、そこには「閉店」の二文字が。
年内いっぱいで、店を畳むことになったとのことだった。

寝耳に水だった。ウソだろ。特に経営が悪い訳でもないのに。勢いでおばさんにも問い質したが、閉店は決定事項。詳細は分からないが、続けるのが無理になってしまったとのことだった。

しばらく、現実を受け入れられなかった。
けど、どうしようもないのか。嘆いても無意味か。
現実を認識した末、私が導き出した行動はただ一つだった。
だったら、お世話になった感謝を込めて、店内に売られているゲームを買い尽くそう。かくしてその日から、私は時間のできた時に訪れては、売られているゲームを可能な限り買い続けた。

そして、大晦日間近の12月29日。翌日も店は営業していたが、諸事情で年内は外出できなくなったため、私はその日に訪れ、最後の買い物をした。

最後に買ったものは例によってゲーム。
プレイステーション2の『ワイルドアームズ アルターコード:エフ』だった。

ワイルドアームズはこれで二本目。一本目は『ワイルドアームズ ザ・フォース・デトネイター』。本作の次に出た新作で、丁度、閉店を聞きつけて買い漁りを始めた時に手に入れたものだった。

本作を買った当時はまだ、そちらを始めていなかった。
やがて年が明けた2007年、購入順に沿う形で始め、エンディングまで駆け抜けた……のだが。

同作はワイルドアームズという作品に対し、芳しくない印象を私に抱かせた。悪い作品だった訳ではない。ただ、やたら大味な戦闘難易度、描写の浅いキャラクター達に強い違和感を覚え、もしかして、自分の嗜好と合わない作品を遊んでしまったのでは……と、思ってしまった。いわゆる「Not for me」なゲームな気がしたのだ。

そんなことがあっただけに、本作を始める前は乗り気でなかった。
また、嗜好に合わない内容だったら、どうしようと。
しかも、これはお世話になった玩具屋で最後に買ったゲーム。
もし、そんな感想で終わったりでもしたら……。

でも、ずっと遊ばず放置するのも良くない。
色々悩んだ末、私は意を決してディスクを取り出し、ゲームを始めた。

そして、エンディングを迎えた時、そこには心の底から安堵する自分の姿があった。

良かった……面白いロールプレイングゲームだった。
見所満載の良作だった。

三人の境遇の異なる主人公達が力を合わせ、世界を支配せんとする魔族との戦いに身を投じる。
王道のストーリーだが、キャラクターの描写が味方、敵共にとても丁寧で、知らず知らずの内に引き込まれる。意表を突く展開も多々あり、特に無口の少年「ロディ・ラグナイト」にまつわるエピソードは、非常に興味深いものになっていた。

演出も見事で、主人公達と何度も対峙する魔族の幹部「ナイトクォーターズ」との戦闘は熱く、ドラマチック。主人公の一人「ザック・ヴァン・ブレイス」と因縁のある「レディ・ハーケン」との戦闘が特に印象的で、彼女との最終決戦は目頭が熱くなるほど、演出に魅了された。

ゲームとしても装備の概念がなく、「パーソナルスキル」と呼ばれる能力で各キャラクターの能力を強化する育成周り、「グッズ」と呼ばれる三人固有の武器で解法を見出す謎解き、そして戦闘発生を阻止できる「エンカウントキャンセル」など、ユニークなシステムが満載で、他のRPGにない遊び応えを作り出している。

荒野の西部劇を基調としつつ、中世ファンタジーからSFまで取り入れた世界観も個性的。それが冒険の舞台となる土地の華やかさを引き立ていて、次はどんな所を冒険するのかという興味を刺激する。

そして、音楽。フィールド、戦闘共に素晴らしい曲ばかりで、延々と聴いていたくなるほど虜にされた。後にサウンドトラックも購入し、現在も作業中のBGMとして活躍し続けている。

それなりに癖もあった。慣性のかかるダッシュ、ターボ設定にしないとテンポが悪い戦闘、臭い台詞回しなど。しかし、丁寧に描かれたストーリーと見事な演出、ユニークなシステムもあって面白さが勝り、最終的にはエンディングを迎えるのが勿体なくなるほど、楽しませてくれたゲームになった。自信を持って言える。これは良作だ。

何よりも、お世話になった玩具屋で最後に買ったゲームが、このような思い出深い作品になってくれたことが嬉しい。

だからこそ思った。
このゲームは絶対に手放してたまるか、と。
ずっと大事にしていかなければ、と。

本作に限らず、私には手放したくないゲームが複数ある。
けど、これはお世話になった玩具屋さんで最後に買ったゲーム。一際、特別な存在だ。だから、例えゲーム機本体が動かなくなっても、本作は守り通していきたい。

そしていつしか、時間ができたら、また最初から遊びたい。
そんな日が来るのを願って、これからも大事に保管していきたいと思う。

これはお世話になった玩具屋さんの思い出が詰まった、自分だけの『ワイルドアームズ アルターコード:エフ』なのだから。

素敵な出会いと思い出に乾杯。

©2003 Sony Computer Entertainment Inc.

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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