【映画レビュー】『ボヘミアン・ラプソディ』~時代を越えた“伝説”のミュージシャン~

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(by 長夏実

フレディ・マーキュリーが亡くなった1991年に私は生まれた。

物心ついたときから『クイーン』は伝説のバンドであり、CMやドラマでも彼らの曲は当たり前のように使われていた。クイーンの絶世期をリアルタイムで経験できないことが非常に残念だ。フレディ・マーキュリーがシャウトしている姿を、テレビでもいいから見てみたかった。

11月9日から公開された『ボヘミアン・ラプソディ』は、フレディ・マーキュリーに焦点を当て、クイーン結成から1985年に開催された20世紀最大のチャリティコンサート・ライブエイドまでを描いた作品だ。

劇中で使われている曲数は20曲以上。映画の序盤、まだ映画館が静けさに包まれているときに流れる「somebody to Love」のイントロを聴き、まだ上映間もないないというのに、すでに鳥肌がとまらなかった。

他にも「Bohemian Rhapsody」はもちろんのこと、「Fat Bottomed Girls」「Another One Bites the Dust」「Radio Gaga」など、クイーンを語るためには欠かせない曲が、濃密なフレディの人生とともに駆け抜けていく。134分、とにかくノンストップだ。まだまだ続きが見たい!終わらないで!ほしいと思った。

クイーンの曲はたくさん聞いてきたが、それでもこの作品を見るまで知らなかったことがたくさんあった。ジム・ハットンやメアリーとの出会い。ロックのイメージと異なるからと、インド人ということを隠していたこと。フレディを、クイーンを知れば知るほどますます彼らの虜になっていく。

そして、映画のラスト 20分。

ライブエイドのシーン。

このコンサートに出演したアーティストはデヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン、ワム!、ザ・フー、ポール・マッカートニー、U2など大御所ばかり。仲違いしていたメンバーに「このコンサートに出演したい」と訴えるフレディの台詞が心に残った。

“もし、このライブに出なかったらこれから毎日死ぬまで後悔することになる”
とにかく最高のライブシーンだった。このシーンだけ実際の映像だったといわれても納得できるくらい、ラミ・マレックにフレディが乗り移っていたリアリティを出すために実物のセット(レプリカ)がボービントン空港基地に設置されて撮影されたそうだ。

例えればフレディ・マーキュリーは、禁断の果実のようなアーティストだ。

ライブステージで彼の世界観を見せつけられ、そのパフォーマンスに魅了された人々は、もっともっと見たい!とさらに彼を求めて欲する。溺れてしまったら、あとはもう彼を愛するほかに道はない。

私も、映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見終わったあと、さらにフレディの虜になってしまった。

フレディはカリスマであるが故の彼の苦悩・孤独、自分の性的嗜好へのとまどいを訴えるかのように歌う。彼は紛れもないスターだが、その孤独やコンプレックスは私たちが普段抱えているそれと変わらない。ただ、スター性があっただけではない。挫折や苦悩、孤独との戦い、葛藤があったからこそ彼は「伝説」になった。

伝説に年代は関係ない。

クイーンの曲は知っているけど、背景まで詳しくないという人にこそぜひ見ていただきたい作品だと思う。

++++
(c) 20世紀フォックス、(c) ニュー・リージェンシー、(c) GKフィルムズ、(c) クイーン・フィルムズ、(c) Queen

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この記事を書いた人

英日字幕翻訳者。中国語も少し。最近は韓ドラにはまってます。字幕担当作品『キス・ミー・ファースト』など多数。

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