望み通りではないけれど、とにかく人生は続く。
――映画『ブーメランファミリー』より
去年の春。私は突然、韓流沼に落っこちました。
それは突然嵐のように…。「冬のソナタ」が大流行したときも、K-POPが流行りだしたときも、韓流ブームにそこまで乗っかることはありませんでした。
友人が好きな韓流アイドルの話をしていても、「ふーん」と相づちを打っていただけだったのに…。
私が沼に落っこちたときは、寝ても覚めても仕事仕事仕事の時期。休む間もなく働いて、もう疲れたバタンキューと倒れ込み、起き上がれないと上を見上げると突然目の前に現れてスッと笑顔で手を差し伸べてくれたイケメン俳優。
そう、そのとき私は姉が「面白いよ」と言っていた『大丈夫、愛だ』(チョ・インソン×コン・ヒョジン)にどハマリし、仕事の合間にドラマを見ることだけが楽しみだったい言っても、過言ではありませんでした。
ハマってしまえばあとは落ちるだけ。ズブズブと沼に沈んでいき、友人から「アラサーでいきなり韓流にはまるなんて…」と白い目で見られてもケンチャナヨ。「英日映像翻訳家なのに、韓流ドラマのほうが詳しいなんて…。」と、しょうもないことで悩んだ時期もありましたが、今は開きなおっています。製作国がアメリカだろうが韓国だろうが台湾だろうが、面白いものは面白いのです。
そして、韓国ドラマにハマってから、字幕のありがたさをひしひしと感じました。
私が分かる韓国語は「カムサハムニダ(ありがとう)」と「ケンチャナヨ(大丈夫)」くらい。翻訳者の方のおかげで、面白いドラマが見られている。ああ、ありがとうございます。私ももっと精進します。
…と、このように、ドラマは私の仕事に対するモチベーションまであげてくれました。
前置きが長くなりましたね。
今回ご紹介したい映画は、私が一番好きな韓国人の女優、コン・ヒョジンの出ている「ブーメランファミリー」(監督:ソン・ヘソン)です。
独身で刑務所帰りの長男ハンモ(パク・ヘイル)、落ちぶれた映画監督で妻と離婚協議中の次男インモ(ユン・ジェムン)、水商売をしながら家族を支えるバツ2の末っ子ミヨン(コン・ヒョジン)。問題を抱える3人の兄弟が実家に出戻り、家族で一緒に暮らすことになる、というドタバタコメディです。
この映画のストーリーテラーは次男のインモ。インモは家族の中で唯一の大卒で、1番の教養人です。映画監督として失敗し、近所からも冷ややかな目で見られ、プライドズタボロだった彼ですが、ある事件をきっかけに心を入れ替え、再びメガホンを手にします。
彼が再びメガホンを取った作品は、決して彼が心から撮りたい作品ではなく、むしろ絶対にこれだけは嫌だと避けていたものでした。
「望み通りではないけれど とにかく人生は続く。どんな人生も捉え方次第だ」インモはそう言って新しい人生に向き合いはじめます。
そしてもう1人印象的な登場人物は、ちょっぴりワケありな母親・ナムシム(ユン・ヨジョン)です。
子供達が様々な問題を抱えているという現実も、彼女にとっては「家族そろって食卓を囲める」楽しいひとときであったのでしょう。「もう肉ばかり買ってこなくてもいい」と家族に言われても、「家族が好きなものを食べさせたい」と毎日毎日夕飯にサムギョプサルを用意する母親の姿に愛情を感じました。
そういう私の母親も、帰省するたびに必ずじゃがりこ全種類を用意してくれるのですが…。
いくつになっても子供に好物を食べさせたいという母心は、万国共通なのだと感じたのでした。
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