アガる映画を観た!
タイトルは『サッドヒルを掘り返せ』。
映画の熱烈ファンによるロケ地復興を追ったドキュメンタリーだ。
彼らが熱狂している映画は『続・夕陽のガンマン』である。

は?『続・夕陽のガンマン』なんて知らねーよ、って顔をしているあなた。
あなたにこそ、この先を読んで欲しいのです。

『サッドヒルを掘り返せ』は『続・夕陽のガンマン』ファンによって賞賛されている。
だが言いたい。
この映画は予備知識ゼロの新参者が観たって、最高に面白い。
声を大にして言いたい。
本当に!!誰が観ても面白いと思うから!!!

『続・夕陽のガンマン』についてはドキュメンタリーの中でよくよく説明してもらえます。なので、ここでは超テキトーに説明すると、主演はクリント・イーストウッド(震える程のイケメン。抱かれたい)、クライマックスに墓地での決闘シーンがある作品だ。

決闘シーンの舞台は円形の広場を囲む広大で美しいサッドヒル墓地。ここの撮影はスペイン北部に作られたオープンセットで行われた。そして、撮影後は約50年もの間放置され続け、ただの荒野と化していた。広場に敷き詰められた石畳は土に覆われ、草がボーボー。誰もそこが名作に出てきた「サッドヒル墓地」だとは気づかない状態だった。

2014年。
子供の頃観た『続・夕陽のガンマン』にシビれ続ける地元の映画バカたちが、面影を失ったサッドヒル墓地を映画で観た景色に修復しようと思いつく。

ただのおっさん、ただのオタクが奮起したのだ。
彼らは「サッドヒル文化連盟」を立ち上げた。

修復は、まず広場の石畳を覆う土と草を退けるところから始まる。仕事が休みの週末、朝から晩まで慣れない手つきで土を掘り続けるおっさんたち。1日中掘り、土を運んでもほんの少し白い石肌が見えるだけ。美しい円形の石畳が現れるのは、気が遠くなるほど先のことだ。映画と同じ光景にするには更に、広場の周りに5000基の墓も建てなくてはならない。

彼らは身体的にも精神的に辛すぎるこの作業を、誰に頼まれたわけでもないのにやり続ける。なぜか。

「クリント・イーストウッドが踏んだ石に触りたかった。掘る理由はそれだけで十分だ」

メンバーのうちの一人、ヨセバ・デル・ヴァレさんはそう言った。
熱い、熱すぎるバカだぜ。

『サッドヒルを掘り返せ』を楽しめるかどうかは、『続・夕陽のガンマン』を好きかどうかにはかかっていない。映像の中に込められた熱量を感じ、こちらからも心を傾けられるかどうかにかかっている。最高の鑑賞方法は、スクリーンに映る熱量たっぷりの映画ファンたちを、こちらも負けじと前のめりで見つめることだろう。

『続・夕陽のガンマン』狂いの男たちは、サッドヒルを掘って、掘って掘りまくった。そして、世界中の『続・夕陽のガンマン』ファンたちにネットを通じて協力を呼びかけると、ヨーロッパ中から土を掘りに来る人が集まった。とうとう2016年には『続・夕陽のガンマン』撮影50周年を記念し、蘇ったサッドヒル墓地で『続・夕陽のガンマン』の上映会を開く。

彼らはとても終わると思われなかった修復をやっと完成させた。映画の中にしかなかったサッドヒル墓地の景色が、ファンにより再び現実に呼び戻された。

上映会当日、『続・夕陽のガンマン』関係者や集まった数千人の作品ファンはみんな、サッドヒルの復活を心から喜びお礼を言った。ただの映画ファンが映画愛を突き詰めた結果、たくさんの同志や関係者に驚きと喜びを与える側になったのだ。奇跡のような出来事。感動に打ち震えるサッドヒル文化連盟のメンバーたちは、目に涙さえ浮かべている。

彼らの人生で最も輝かしい瞬間を観た私は、やったぜ!と心の中で拳を突き上げた。

何かに対して情熱を傾けている瞬間、人間は輝くのだと思う。映画を観るにも、嘘でしょ!そんなー!やったー!と映し出される出来事に没入し、いちいち影響を受けられたならば、上映時間は人生の輝かしい瞬間となるだろう。

(c)Zapruder Pictures 2017
『サッドヒルを掘り返せ』公式サイト

 

 

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こばやしななこ

サブカル好きのミーハー。恥の多い人生を送っている。「note」でも、寄稿記事一覧、映画/文学/テレビ