【連載/スローな落語家と暮らしてる】第6話: 落語家はお正月の縁起物?

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(by 蛙田アメコ

■落語家のお正月■
年末年始といえば、多くの人たちにとっては待ちわびた大型連休だ。帰省して一族で過ごす人もいれば、繁華街でにぎやかに過ごす人もいる。年末年始にも働いてくださっている医療交通等の各種インフラ系の職種の皆様には頭が下がる思いでございます。といいつつ、自分も大みそかと元日以外は普通にお仕事だったのですけれど。……そういったわけで、あけましておめでとうございます。本年も、ごくごくスローに我が家の落語家の生態をお届けしてまいりたいと思います。

さて。世間がそわそわする年末年始。落語家はどう過ごしているのかをお知らせしたいと思います。

■お正月、めっちゃ忙しい■
これは前回も触れたとおり、どうやら落語家というのは「縁起物」の一種として世間から認知されている節がある。年末はもとより、年始になると輪をかけて忙しくなる。配偶者も元日の7時から出勤していた。なお業務内容は日ごろからお世話になっているお寺での、初詣客の誘導である。落語はしない。ちなみに黒紋付き袴での出勤だそうだ。完っ全に縁起物枠でのお仕事である。大変なものだなあ。

■お正月は寄席も特別シフトに■
ちなみに、このお正月期間というのは落語家のホームである寄席も特別シフトに入る。

普段の寄席は、毎月10日ずつで区切って、「〇月上席(1日~10日)」、「〇月中席(11日~20日)」、「〇月下席(21日~30日)」、そして「余一(31日)」という区切り方で出演者を入れ替えていく。しかし、1月だけは少し様子が異なる。1月1日~1月10日は「正月初席」、1月11日~20日を「正月二ノ席」という特殊な呼び方をする。そして、その間はずっと寄席はお正月! 松飾なんかもずっと飾られている。すごい。お正月長い。

正月の2週間は顔見世興行=お客様への新年のご挨拶の意味合いが強く、いつもより尺が短い枠で多くの芸人さんが出演している。笑点メンバーはじめ有名な落語家さんが出ていたりとけっこう寄席初心者が楽しめることもあり、初詣帰りなどに「お正月だし、寄席でも」というお客様で浅草演芸ホールや新宿末広亭は大賑わいだそうだ。楽屋の様子も普段と違う。特に、前座さんたちはその年にはじめて会う二つ目や真打の師匠がたから、なんと「お年玉」をもらえたりもするのだそう。あくまで縁起物なので、めちゃくちゃ少額だけれど。

■年末、お正月の準備に追われる■

やっべえ、年賀状書かなきゃ!! ……というのは、一般家庭でも繰り広げられる年末風景だろう。計画的にやっている人は偉すぎる。落語家の年末のお仕事にはもうひとつある。それが、前述の「前座さんにあげるお年玉の準備」だ。渡しもらしがないように、ポチ袋に記名をしたり、中に入れるピン札を用意したり……と、なにかと書き物が多くなる。年の瀬になると、宛名は配偶者が、裏になにかイラストやメッセージを書くのを私が、というので一緒に作業をする。普段、それぞれに仕事をしている我が家にとってはちょっと楽しい時間である。

たくさんの千円札。枚数の多いピン札は問答無用で豊かな気持ちになるのでよい。

同業者からのお年玉は基本的には前座のうちしか貰えないものだけれど、たま~~~にお弟子さんにお年玉をお渡しした返礼にその師匠からお年玉をもらえることがあるそうな。
配偶者もこの間、「お年玉をもらった!!!!」と狂喜乱舞しながら帰宅した。よかったね。お着物ピンク色の某師匠、どうもありがとうございます……。

■お年玉のお返しは、手拭い!?■
前座以上の二つ目・真打の落語家も、お客様から新年のご祝儀としてお年玉をもらえることがある。配偶者曰く、お客様からのお年玉はめっちゃ嬉しいらしい。

ちなみにこの時期、新年のあいさつ用に多くの落語家さんは自分のオリジナル柄の手拭いを持ち歩いている。落語家にとっては、自分のオリジナル手拭いが名刺代わりなのだ。お年玉をあげると、そういった非売品の手拭いをお返しにもらえたりもします。お近くに落語家が現れた際には、ぜひお試しください!

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この記事を書いた人

蛙田アメコのアバター 蛙田アメコ ライトノベル作家

小説書きです。蛙が好き。落語も好き。食べることや映画も好き。最新ラノベ『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記〜かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』3巻まで発売中。既刊作のコミカライズ海外版も多数あり。アプリ『千銃士:Rhodoknight』メインシナリオ担当。個人リンク:  小説家になろう/Twitter/pixivFANBOX