【連載/スローな落語家と暮らしてる】第3話: 落語家とTwitterと弁当と

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(by 蛙田アメコ

■スローな落語家、Twitterをはじめる■
我が家の落語家は動作もライフスタイルも、とってもスローだ。
SNSはほとんどやらないし、ヘアワックスは手作り(蜜蝋をレンチンして作っている。正直、意味が分からない)、ジャングルにしか生息していなさそうな謎の植物(エアプラントというらしい)をベランダで栽培している。とにかく、情報化社会への反骨心を強く持っているとしか思えない暮らしぶりだ。

我が配偶者だけかと思っていたけれど、どうやらそもそも、落語家はスローな人種が多いようだということが最近分かってきた。
なぜって、そのスローな配偶者が、「〇〇師匠のパソコンのセッティングを頼まれたので行ってくる!」と意気揚々と出かけていくのだから。
そのうしろ姿を見るたびに、「この世の中は何も信じられねぇな……」という気持ちになる。業界全体がスローなんだろうか。
そういえば、どこの師匠とは言わないけれどご自宅に冷蔵庫がないという方もいらっしゃるようである。スローがすぎるぜ。

さて。
そんな我が配偶者が数年前、満を持してTwitterをはじめたのである。
ちょっとした事件だった。あのスローな男がSNSをやろうだなんて。君はこの高速化した情報化社会に耐えられるのか!? ……と、いらん心配をしたものである。

結論から言えば、全然大丈夫だった。なぜか。
Twitterでも相変わらずスローだったからである。

■Twitter、家庭内連絡網として活躍する■
落語会の告知用にはじめたTwitterの更新頻度は、結局3日に1回くらいに落ち着いているようだ。スローにもほどがある。それで本当に宣伝として機能しているのかどうか、ちょっと疑問である。
というか。こちとらTwitterに常駐しているタイプのオタクで、1日平均50ツイートはくだらない。単純計算だと、だいたい3日間で配偶者が1年間にするツイート量を上回ることになるのだ。
……え、仕事しろって? ちゃんとしてますよっ! ……Twitterの合間に。

しかし。この配偶者のTwitterが意外と便利なことに最近気が付いた。
なんとこのアカウントをフォローすることで、我が家の落語家が何時ごろに帰宅するのか、そしてある重要情報を知ることができる。

ずばり、「今日の夕飯どうすんの?」ってやつだ。

この一文でこのエッセイを読んでいる全国の主婦ないしは主夫の皆様が首がもげるほどに頷いていると思う。お前は今日、家でメシを食うのか食わんのか。生きるべきか死ぬべきか、なんてこの際どうでもいいから夕飯の都合だけでも教えてくれ!
これが、我が家ではおそらく、他のご家庭に輪をかけて死活問題なのである。

■落語家メシ~お土産のお弁当~■
落語家というのは、とにかくメシをもらってくるのだ。寄席や落語会があるたびに、お客様のご厚意で自分ではめったに買わないような美味しいお菓子やお弁当をいただくことが多い。正直、同年代の会社勤めの方よりも配偶者の手取りはうんと少ないけれど、食べているものの質はかなり高いほうなのではないかと思う。とってもありがたい。

たとえば、配偶者がどうやら『芸協らくごまつり』(毎年実施されている、落語芸術協会によるファン感謝デー。大人の文化祭ってかんじでとても楽しいので、機会があれば是非ともいらしてください!)に出勤しているとキャッチした私は、その日はご飯を炊かなかった。

余ったお弁当を頂いてくる可能性があるからだ。
案の定、こんな美味しいお弁当が深夜に我が家にやってきた。

かわいいお稲荷さん! 妻、大喜び!!!!
そう。こういう差し入れによってかなり我が家の台所は助かっている。お土産を差し出す配偶者は、いつもどこか誇らしげだ。
差し入れをくださるお客様方、あまったお弁当を下さる皆さま、本当にありがとうございます。

ちなみに、配偶者と私は結婚してから合わせて18キロ太っている。
……だって深夜のお弁当、美味しいんだもん。

そういうわけで。
今日も期待に胸を膨らませ、腹を凹ませながら私は我が家の落語家のTwitterを監視する業務にいそしむのである。

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この記事を書いた人

蛙田アメコのアバター 蛙田アメコ ライトノベル作家

小説書きです。蛙が好き。落語も好き。食べることや映画も好き。最新ラノベ『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記〜かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』3巻まで発売中。既刊作のコミカライズ海外版も多数あり。アプリ『千銃士:Rhodoknight』メインシナリオ担当。個人リンク:  小説家になろう/Twitter/pixivFANBOX