ハロウィン。元は古代ケルト民族の宗教行事として始まり、19世紀にアメリカ大陸へと移民と共に渡った後、娯楽色の強い民俗行事として浸透した秋のイベント。
日本国内も近年、関連イベントが盛んに開かれるようになり、すっかり10月末の恒例行事として、良くも悪くも注目を集めるようになった。

そんなハロウィンは、ホラー映画の題材として扱われやすい。
ジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』シリーズはその象徴だ。
筆者はホラー映画が大の苦手なので、シリーズは一作も観たことがないが。
ただ、主人公を演じる俳優が『007は二度死ぬ』で宿敵ブロフェルドを演じられたドナルド・プレザンス氏であることは存じている。氏が演じたブロフェルドは右目の傷が大変印象的だった。

なので、ハロウィンの映画とは縁がない……訳ではない。
印象に残っている映画で『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』がある。
映画『バットマン』、『バットマンリターンズ』で監督を務め、以降も『マーズ・アタック!』、『スリーピー・ホロウ』などの傑作を手掛けたティム・バートン氏が原案・製作を務めたミュージカル映画だ。
アメリカでは1993年、日本では1994年に劇場公開された本作だが、私はそれから12年以上が経過した頃にDVDレンタルで鑑賞した。
何故、そんな頃に鑑賞したのかのは当時、購入を目論んでいたゲームにある。

ゲームの名は『ティム・バートン ナイトメア・ビフォア・クリスマス ブギーの逆襲』。
2004年10月21日にPlayStation 2用ソフトとして、カプコンより発売されたアクションゲームだ。

私はPlayStation 2本体を手にしたのが大分遅く、以降、今まで興味を持つも、ハードがないために見送ったゲームを買い集めていた。本作を知ったのは確か、東京都内の家電量販店内で目にした時だったと記憶している。
原作映画のことは全く知らなかった。
だが、お洒落なパッケージジャケット、ジャンルがアクションゲーム、そして発売元はロックマンで付き合いの長いカプコン。極め付けに、同社はディズニー絡みのゲームで多くの良作を輩出した実績がある。これは遊んでみたい!……と思ったのだが、原作映画の続きを描いた内容とのことなので、まずは映画を観てからと思い、某有名レンタルショップに足を運んでDVDを借りた。

そんな流れで観た本作だったが、事前知識が一切無かったのもあって、大きな衝撃を受けた。一体一体、人形のポーズを撮影しては動きを付ける「ストップモーション」方式を用いて表現されたアニメーション、不気味ながらも愛おしいキャラクター達、ミュージカル仕立てでテンポがよく、起承転結も明瞭なストーリー。上映時間約76分と短めながら、制作者が文字通り魂を込めた映像と演出は圧巻で、10年以上も前の作品であることを思わせない魅力がそこにあった。

何より、ストーリーが見事だ。
毎年、同じことを繰り返すハロウィンに退屈した骸骨の王で主人公のジャックが、ふとしたきっかけで「クリスマス・タウン」に迷い込み、そこで知ったクリスマスに衝撃を受け、自分達がサンタクロースに代わり、今年のクリスマスを盛り上げようと奮闘する。
分かりやすく、明瞭な内容だが、沢山の専門書を読んで知識を詰め込み、イベントの成功させるべく、街の住民達の協力を仰ぎながら取り組むジャックの姿には、殻に閉じこもらず新しいことに挑戦する志の高さ、例えその先に失敗が待ち受けようとも、自分を信じ続けるひたむきさが色濃く描かれていて、観る者の心に訴えかける。

最終的にジャックの考案したクリスマスは、ヒロインのサリーが予見した通りの結末を迎える。だが、そんな目に遭っても彼は心折れることなく、むしろ新しいことに挑戦したことで、今まで気づかなかった自身の強みを知り、大きく成長する。そうして物語は一つの騒動を経てクライマックスを迎え、新しいハロウィンの始まりとジャックの身の回りの変化を感じさせながら幕引きとなる。

同じことを繰り返し、内に閉じこもり続ければ世界は広がらない。
そこから少しでも飛び出せば、必ず素敵なことが起こり、自分自身にも影響を与える。
アニメーションの凄さもあって、そちらに目が行ってしまう本作だが、この単純ながらも考えさせられるテーマが込められたストーリーも侮り難く、観る者に活力を与えてくれる。登場キャラクター達も皆、不気味な面々だが、精一杯楽しみながら生きている姿が全編を通して描かれていて、その見た目からは想像もつかない力強さと明るさを感じ取れる。

日本語吹き替え版でなら、その魅力は二割増しとなる。
特にジャックの吹き替えを務める俳優・市村正親氏の演技が素晴らしい。舞台・ミュージカルにも多く出演されてる氏の真骨頂が発揮されている。また、バラエティ番組への出演に象徴されるように、素の市村氏は明るい人柄で知られる。ジャックは氏のそんな一面も含んだキャラクターとしても描かれているので、分かる人ほどニヤリとできる面白さもある。

昨今はBlue-rayも販売され、より高精細な映像で楽しめるようにもなった。25年以上も前の作品という事で古臭さが際立つかと思いきや、そんなことはなく、むしろ新鮮に感じてしまう美しさなので、過去に鑑賞済みの人も一度は観る価値がある。

題名からして、クリスマスの季節でも楽しめる魅力を持つ本作。
ハロウィンはお祭りなのだから、楽しく当日を過ごしたい。
そう望む人にほどお薦めしたい、傑作というに相応しい作品だ。

ちなみにその後、『ブギーの逆襲』はどうしたのかというと、未だに買うことも、遊ぶことも叶わず。鑑賞から間もなく、あるプレミアソフトを衝動買いしたことによる資金制限で見送ることになり、制限解除以降も機会に恵まれず、気が付けば10年以上の月日が流れてしまった。

そろそろ……手に入れたいです…。
アナタはどこにいますか…?

(c) Disney, (c) ウォルト・ディズニー・ジャパン

シェループ

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。
連載エッセイ:だからゲームはやめられない
ゲーム/アニメ/映画