~時流に翻弄され、最大の好機を失った不遇の傑作『レイマン レジェンド』~

2018年のサッカー・ワールドカップはフランスの優勝で幕を閉じた。
率直に今年のフランスは強かった。
エムバぺが凄すぎた。なんだ、あの速力。人間業ではない。

そんなフランスと言えば、日本のみならず、世界各国に開発・営業拠点を構えるゲーム会社「ユービーアイソフト」の本社がある国だ。近年の同社の主力タイトルは中世ヨーロッパに伝わる伝説「暗殺教団」を題材としたアクションアドベンチャー『アサシンクリード』。他の代表作ではファークライ、レインボーシックス、スプリンターセルなどがある。

主力作品の影響もあり、昨今はリアル系のゲームを得意とする会社の印象が強いが、コミカルなゲームも多数、作られている。
その中でも1996年にプレイステーション、セガサターン用ソフトとして発売された『レイマン』は、ユービーアイソフトのマスコット的存在として、現在もその役割を務めている。

ただ、その容姿はフランス流のアクの強さ全開。日本人なら拒否反応すら出かねないデザインだ。
しかし、ゲームの完成度は高く、2011年(日本では2012年)に発売された『レイマン オリジン』はアニメがそのまま動くグラフィック、滑らかで軽快な操作性、おもちゃ箱をひっくり返したかのようなステージと言った魅力的な要素の数々で大絶賛された。

直近の新作は『レイマン レジェンド for Nintendo Switch』。
『レイマン レジェンド』はオリジンの流れを汲む続編で、2013年、WiiUソフトとして任天堂から発売された。その後、ユービーアイソフトからプレイステーションVita版もリリースされ、海外ではプレイステーション4、Xbox One向けにも供給されている。

率直に言って、本作は不遇の作品だ。

当初、WiiU独占タイトルとして制作が進められていたこの作品は、WiiUゲームパッドを巧みに活かした操作性と遊び心に満ちた仕掛けの数々で大きな注目を集めた。
その高い完成度とレイマンの知名度を鑑みてか、日本国内では任天堂が販売とローカライズを担当することになり、2013年10月の発売が予告された……のだが。

▲ZombiU(ゾンビU)(WiiU:2012年12月2日発売)

WiiUの世界規模での不調、ユービーアイソフトが本体と同時発売した完全新作サバイバルホラー『ZombiU(ゾンビU)』が十分な成果を得られなかったのを受け、本作を他のハードにも供給するマルチプラットフォーム展開に方針転換。WiiU独占タイトルではなくなってしまった。それでも日本では予定通り、任天堂からWiiU版が発売されたが、方針転換の影響か、広告展開があまり行われず、積極的にゲーム情報を追っていなければと分からない状況下で世に放たれてしまった。
そんな形で発売されたのだから、どんな売上になったのかはお察しの通り。

初お披露目された時から本作に注目していた筆者は、WiiU最初のゲームとして購入した。面白かった。WiiU本体を買って良かったと心の底から思うほど面白かった。
なのに、大人の事情で十分にアピールされず、埋もれてしまった。
日本で認知されるかもしれない最大の好機だったのに、それを失ってしまった。
事情が事情とは言え、なんで面白いゲームがそのような目に遭わなければならないのか。最大の好機を無くさねばならなかったのか。運命の理不尽さを実感させられる。

昨今、出て間もないニンテンドースイッチ版も宣伝は満足に行われず、成果はWiiU版同様か、それ以下。まるで宿命であるかのように埋もれてしまっている。

対照的にこのシリーズで誕生し、後に単独作品を持つに至った変なウサギ「ラビッツ」は、任天堂とのコラボタイトル『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』でキモカワ系キャラクターとして広く認知され、ゲームもヒットしている状況である。なんという光と闇。

だからこそ言い切りたい。本作はラビッツと同じくらい認知されていいゲームだ。
その魅力を一言で言うなら、”むせる”レベルの密度の濃さ。横スクロールのマリオ系アクションゲームという、王道の作りをした本作だが、徹底的にアトラクション色を打ち出していて、どこのステージも遊んだ者を「ぬおっ!?」と言わせてしまう驚きに満ちている。

天地が引っ繰り返って操作手順が変わったり、リズムゲームが始まったり、綺麗な海に潜り続けたら潜水服に身を包み、右手にドリルを装着した怪物が出てきそうな地下基地に辿り着いた……と思ったら、スパイ大作戦が始まっちゃったり。
挙句の果てには後ろから巨人が進撃してきたり、とあるキャラクターが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいく涙モノのシーンが流れるなどなど。全編を通してプレイヤーを楽しませるエンターテインメント精神が炸裂している。おまけにこのようなコースが120個。圧巻である。

▲泣ける。

アクションもスピーディ且つ、迫力満点で、それらをフル活用する巨大なボスとの戦闘はやり応え十分。彼らを打倒した後、巨大なボスをけしかけた悪党に宇宙の果てまでイッタキリの一撃を加えるシーンもスカッとする気持ちよさがある。

最大五人の協力プレイにも対応していて、WiiU版では一人がゲームパッドでサポート役を務め、他の四人はステージを進むという独特な遊びも楽しめる。殴る蹴るなんでもありなサッカーの対戦型ゲームも遊べるほか、世界中のプレイヤーとタイムを競い合うオンライン対応のチャレンジモードもあり、極めるとなればかなりの時間を費やすことになる。

日本人向けじゃない雰囲気バリバリだが、その奥には極上のエンターテインメントが詰まっている。アクションゲームが好きなら、遊んで然るべき傑作である。
もう5年も前のものだが、今遊んでも全く色褪せないし、ニンテンドースイッチ版は携帯モードでしか遊べないステージの追加などで、更に遊び応えが増している。フランスはユービーアイソフトが誇るエンターテインメントマスターにしてスーパーヒーロー、レイマンの凄味を味わってみよう。

(c) 2013 Ubisoft Entertainment, (c) 2017-2018 Ubisoft Entertainment, (c) Nintendo

シェループ

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。
連載エッセイ:だからゲームはやめられない
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